日本音楽史の巨星・小島美子さん逝去!最後の琵琶盲僧を記録した96年の使命!

2026年2月27日、日本音楽史研究の第一人者として知られる国立歴史民俗博物館名誉教授・小島美子(こじま・とみこ)さんが、肝不全のため96歳でお亡くなりになった。

福島県出身の小島さんは、東京大学と東京藝術大学という二つの学問の頂点を経て、わらべ歌から民俗音楽、童謡まで、日本の「音の文化」を生涯にわたって掘り起こし続けた研究者だった。

その訃報は、単なる一研究者の死にとどまらない。

日本の音の記憶を守り、後世に伝えることに96年の人生を捧げた「語り部」を失ったという意味で、日本の音楽文化史にとって取り返しのつかない喪失である。

そこで今回は、

日本音楽史の巨星・小島美子は二つの学府を歩んだ異色の音楽学者

日本音楽史の巨星・小島美子の永田法順さんとその祈りの世界

日本音楽史の巨星・小島美子の記録することの使命

3つの観点から迫っていきます。

それでは、早速本題に入っていきましょう。


目次

日本音楽史の巨星・小島美子は二つの学府を歩んだ異色の音楽学者

小島美子さんの経歴は、一本筋の通った研究者人生でありながら、独特の迂回路を辿っていた。

1949年、日本女子大学国語科を経て東京大学へ進学し、1953年に文学部国史学科を卒業

一度は中学校教員の道に進んだものの、3年で退職し、1958年に東京藝術大学音楽学部楽理科へ改めて入学するという異色の経歴を持つ

「歴史学者」と「音楽学者」の両方の素養を身に宿したことが、後の研究の厚みを生み出した。

1985年に国立歴史民俗博物館教授に就任した小島さんは、以後日本を代表する音楽民俗学の拠点を担い、1994年の定年退官後も日本民俗音楽学会会長や江戸東京博物館研究員として活躍し続けた。

主な著書には『日本の音楽を考える』(1976年)、『歌をなくした日本人』(1981年)、『日本音楽の古層』(1982年)、『音楽からみた日本人』(1997年)、『日本童謡音楽史』(2004年)などがあり、日本人と音楽の関係をさまざまな角度から照らし出した。


日本音楽史の巨星・小島美子の永田法順さんとその祈りの世界

小島さんの業績のなかで、とりわけ後世への遺産として際立つのが、宮崎県延岡市の琵琶盲僧・永田法順さんの記録作品である。

永田法順さんは1935年、宮崎県延岡市に生まれた。

幼くして失明し、13歳で天台宗・長久山浄満寺に入って得度。

以来、鎌倉時代から連綿と続く盲僧琵琶の伝統を守り続け、延岡市内や北方町内の約970軒の檀家を一軒一軒訪ね歩いて、琵琶を弾きながら「五穀豊穣・無病息災」の祈願を行ってきた。

その演奏技術は卓越しており、膨大な「釈文(しゃくもん)」——仏教説話や教えを語り歌う口承の音楽——を全12巻にわたって暗記していた。

2001年に延岡市の無形文化財、2002年には宮崎県の無形文化財保持者に認定された「日向盲僧琵琶」の唯一の継承者だった。

しかし2010年1月、永田さんは後継者を残すことなく逝去。「最後の琵琶盲僧」はここに途絶えた。


日本音楽史の巨星・小島美子の記録することの使命

小島美子さんが永田法順さんに目を向けた背景には、彼女の一貫したテーマ——「消えゆく日本の音を記録し、歴史の証言として残す」という使命感——があった。

国立歴史民俗博物館では、1980年代後半から民俗研究映像の制作が本格化しており、小島さんはその中心的な役割を担っていた。

日本各地に残る民俗音楽の現場に足を運び、映像と音声によって記録を残すことは、単なる「研究」の枠を超えた文化保存活動だった。

琵琶盲僧の伝統は、宗教民俗史・民間文芸史・音楽史の観点からきわめて貴重でありながら、担い手の高齢化と後継者不足により消滅の危機に瀕していた。

小島さんが残した記録は、永田さんの声と琵琶の音を「現代に響く四絃の譜」として封じ込め、永田さんが亡くなった後もその祈りの世界が研究者や一般の人々に届くための橋渡しとなっている。


まとめ

小島美子さんが96年の生涯をかけて証明したのは、「音楽は単なる娯楽ではなく、その民族の歴史・信仰・生活が凝縮された生きた文化遺産である」という事実だ。

東大と藝大という二つの道を歩んだ彼女だからこそ、「歴史」と「音楽」の間に橋を架けることができた。

そして永田法順さんという唯一無二の伝承者を映像と文字で記録したことは、消えてしまった音を「記憶」として永遠にとどめる行為でもあった。

琵琶盲僧の祈りの声は、もう現実の空気を振るわせることはない。

しかし小島さんが残した記録のなかで、その音は今も静かに息づいている。

二人の「語り部」が遺したものは、消えゆく日本の魂の声に耳を傾けることの大切さを、私たちに静かに問い続けている。

それでは、ありがとうございました!

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