大手ゼネコン鹿島の社長を務めた天野裕正(あまの・ひろまさ)氏が、2026年11月23日に逝去しました(享年74)。
鹿島は公式発表で、天野社長が社長就任(2021年)以降、「中核事業の強化」と「建設バリューチェーンの拡充」を牽引し、「人」「技術」「信頼」を重視する方針のもと、持続的成長の礎を築いたとしています。
この記事では、公表情報をベースに、天野氏の経歴を時系列で整理しつつ、社長として何を重視していたのか(=仕事観)を読み解きます。
そこで今回は、
天野裕正の経歴|1977年入社から社長就任までを時系列で整理
天野裕正の功績の中の中核事業強化×建設バリューチェーン拡充
天野裕正の功績の中の仕事観は「信頼」から逆算
3つの観点から迫っていきます。
それでは、早速本題に入っていきましょう。
天野裕正の経歴|1977年入社から社長就任までを時系列で整理

天野裕正氏は1977年4月に鹿島建設へ入社。
長いキャリアの中で、建築領域の中枢と主要拠点のマネジメントを担い、最終的にトップへ上り詰めた人物です。
公表されている主な経歴は次の流れです。
2009年に執行役員(建築管理本部副本部長)となり、会社の建築機能を束ねる側へ。
続いて2012年に中部支店長、2014年に東京建築支店長へと進みます。
2017年には副社長執行役員(東京建築支店長)を務め、2021年6月に代表取締役社長へ就任しました。
この並びだけでも見えるのは、「現場の経験」→「建築の司令塔」→「大都市圏の基幹拠点マネジメント」→「経営中枢」という積み上げ型のルートです。
支店長職は“受注・工程・品質・安全・人”が一気に問われるポジションで、ここでの実績が「変化に強い経営」を担う土台になった、と会社側も位置づけています。
天野裕正の功績の中の中核事業強化×建設バリューチェーン拡充

鹿島は、天野社長について「中核事業の強化」と「建設バリューチェーンの拡充」により社業の発展を牽引した、と明確に評価しています。
ここでいう“中核”は、建設(国内・海外)や開発など、鹿島の強みそのもの。
一方で“バリューチェーン拡充”は、設計・施工だけに留まらず、上流から下流までを含むサービス領域を広げ、価値提供を太くする発想です。
実際、天野氏は社長就任直後のインタビューで、鹿島グループは中核事業だけでなく、バリューチェーンの上流から下流まで幅広いサービスを持つ、と整理したうえで、「鹿島グループのオリジナリティ」を自分の社長在任中に確立したい、と語っています。
また、2024~2026の中期経営計画でも、国内外の建設・不動産開発を強化しながら、バリューチェーン拡充とR&D、イノベーション推進で新たな価値を創る、という方向性が示されています。
“工事を請け負う”だけでなく、“価値の作り方そのもの”を厚くする。
天野体制の功績は、この軸をぶらさずに前へ進めた点にあります。
天野裕正の功績の中の仕事観は「信頼」から逆算

天野裕正氏の仕事観を一言で寄せるなら、「信頼から逆算して、課題に丁寧に向き合う」タイプです。
社長就任時のインタビューでも、不透明な市場環境の中で、災害の激甚化、カーボンニュートラル、感染症対応といった社会課題を挙げ、鹿島が真摯に向き合い解決し続けることで「社会とお客様に信頼される会社」を目指す、と語っています。
この“信頼”は精神論ではなく、具体策に落ちています。象徴的なのがDXの捉え方です。
天野裕正氏は、建設は膨大な部品を組み上げるモノづくりであり、工場を持たない分、知識やノウハウを具現化する「人」が資源だと説明。そのうえで、暗黙知・属人化した知識をデジタルに落とし込み、文字・数字・図面などで「見える化」し、蓄積・標準化して誰でも使いやすくすることが重要だ、と述べています。
つまりDXは“流行りのIT導入”ではなく、技能伝承と生産性の両方を守るための仕組み、という位置づけだったわけです。
さらに担い手問題についても、ロボット化・自動化だけでは埋まらない領域が残ることを前提に、若い入職者が増える実効的な取り組み(処遇改善、育成・定着、4週8閉所の促進等)を挙げ、大手が主導すべきだと語っています。
ここも一貫していて、「良い仕事を続けるには、人が安心して働ける環境が必要」=信頼の土台を整える、という発想です。
技術面では、遠隔・自律施工など“次の建設”にも目線がありました。
鹿島はJAXA等と、月面環境を想定した自律遠隔施工の実証にも取り組み、複数建機の同時稼働や通信遅延を想定した運用など、月面の特定領域での作業に必要な技術の妥当性確認を報告しています。
こうした挑戦は、単なる話題作りではなく、「人手不足」「安全」「生産性」といった現実課題に対する“技術立社”としての解であり、天野氏が重視した「技術」と直結しています。
まとめ
天野裕正氏の軌跡は、1977年入社から建築の中枢、基幹支店の経営を経て、2021年に社長へ至る“現場とマネジメントの積み上げ”でした。
社長としての功績は、会社が公式に掲げた通り「中核事業の強化」と「建設バリューチェーン拡充」を軸に、変化の激しい時代でも持続的成長の礎を作った点にあります。
そして仕事観の中心にあったのは「信頼」。DXを“暗黙知の見える化と標準化”として捉え、担い手問題を“産業の存続条件”として語り、技術開発も現実課題の解決へつなげる——この一貫性が、天野氏の経営者としての輪郭をはっきりさせます。
なお、報道では天野氏の逝去後、押味至一会長が社長を兼務する体制に移行したと伝えられています。
それでは、ありがとうございました!

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