「満州アヘンスクワッド」を読んだ多くの人が、まず圧倒されるのは物語以前に画面の説得力ではないでしょうか。
作画を担当した鹿子さんは、本名や学歴といったプロフィールをほとんど明かさず、それでもなお強烈な存在感を放った漫画家です。
この記事では、なぜ鹿子さんの作画は“凄い”と感じられるのかその理由を、感覚論ではなく技術面から整理しながら解説していきます。
そこで今回は、
鹿子さんの作画が凄い理由は「説明しない画面構成」が生むリアリティ
鹿子さんの作画が凄い理由は感情表現の設計力
鹿子さんのプロフィールを語らず「画力」で信用を積み上げた作家性
3つの観点から迫っていきます。
鹿子さんの作画が凄い理由は「説明しない画面構成」が生むリアリティ

鹿子さんの作画の最大の特徴は、説明過多を徹底的に避けた画面構成にあります。
多くの青年漫画では、
- モノローグ
- ナレーション
- セリフによる補足説明
で状況を理解させる場面が増えがちです。
しかし鹿子さんの画面では、
- 無言のコマ
- 視線だけのアップ
- 背中や手元だけを切り取った構図
が頻繁に使われます。
これは単なる“雰囲気重視”ではなく、「読者に考えさせる余白」を計算した設計です。
特に「満州アヘンスクワッド」では、
- 密造の現場
- 暴力が起きる直前の静寂
- 人物が倫理を踏み越える瞬間
こうした場面で情報を削ることで、逆に緊張感を最大化しています。
鹿子さんの作画が凄い理由は感情表現の設計力

鹿子さんのキャラクターは、いわゆる「表情豊か」ではありません。
それでも感情は、はっきりと伝わってきます。
理由は明確で、顔ではなく“身体全体で演技させているからです。
具体的には、
- 肩の落とし方
- 立ち位置の距離感
- 顔を描かず、首筋や顎の角度だけを見せる構図
こうした要素が積み重なり、キャラクターがまるで舞台役者のように“芝居”をします。
また、
- 善悪の境界に立つ人物
- 利益と恐怖の間で揺れる心理
を描く際、感情を断定しない表情が多用されます。
これは、
「この人物をどう感じるかは、読者に委ねる」
という姿勢でもあり、物語を一段“大人向け”に引き上げる効果を生んでいました。
鹿子さんのプロフィールを語らず「画力」で信用を積み上げた作家性

鹿子さんは、
- 本名
- 学歴
- 漫画家になるまでの詳細な経歴
をほとんど公表していません。
これは情報がないというより、あえて語らなかった可能性が高いと考えられます。
理由はシンプルで、
- 絵を見れば分かる
- 読めば技術は伝わる
という、職人型のスタンスを貫いていたからです。
実際、
- 建築物や街並みの正確なパース
- 歴史物に耐える小道具・服装の描写
- アクションと心理描写を同時に成立させるコマ割り
これらは、「どこで学んだか」より「どれだけ描いてきたか」が雄弁に物語っています。
プロフィールではなく、積み上げた作画の量と精度で信頼を勝ち取った漫画家——それが鹿子さんだったと言えるでしょう。
まとめ
- 鹿子さんの作画は情報を削ることでリアリティを高める設計型
- 表情に頼らず、身体・間・構図で感情を語る技術
- 本名や学歴を語らずとも、画力そのものが作家の履歴書になっていた
だからこそ、「満州アヘンスクワッド」は作画が変わっても“鹿子さんの重み”が語られ続ける作品になっています。
鹿子さんは、自分を説明しない代わりに、絵で全てを説明しきった漫画家でした。
──作品が続く限り、その凄さは消えません。
それでは、ありがとうございました!

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