名優・水谷貞雄(みずたに・さだお)さんが、2025年9月29日、心不全のため91歳で逝去されました。
舞台を中心に生涯現役で活躍し、劇団民藝の名脇役として60年以上にわたり舞台芸術を支え続けた人物です。
最年長での読売演劇大賞受賞という快挙を果たしたその人生は、まさに「演じることとともに生きた人」でした。
本記事では、水谷貞雄さんの生涯と功績、そして舞台人としての哲学を振り返ります。
そこで今回は、
法学部から演劇の道へ―「民藝」への情熱と転機
水谷貞雄さんの功績はテレビ・映画でも光る存在感
水谷貞雄さんの功績86歳での快挙
3つの観点から迫っていきます。
それでは、早速本題に入っていきましょう。
法学部から演劇の道へ―「民藝」への情熱と転機

水谷貞雄さんは、早稲田大学法学部を卒業後、安定した道を歩むこともできたはずでした。
しかし、彼が選んだのは法律ではなく、人間の心を描く“演劇”という世界。
1956年に劇団民藝附属・水品演劇研究所に入所し、1962年に劇団員となります。
当時の民藝は、滝沢修や宇野重吉といった名優たちが在籍する、日本を代表する劇団のひとつ。
その中で水谷貞雄さんは、人間の情感や社会の真実を舞台で伝えるという民藝の理念を胸に、着実に実力を磨いていきました。
初舞台は1958年の『法隆寺』。以後、チェーホフ作『櫻の園』や『アンネの日記』などの名作に出演し、温かみと深みのある演技で観客を魅了しました。
“台詞ではなく心で語る俳優”として、多くの後輩俳優からも慕われていました。
水谷貞雄さんの功績はテレビ・映画でも光る存在感

舞台を主軸としながらも、水谷貞雄さんは映像作品でも確かな印象を残しました。
1994年のNHK大河ドラマ『花の乱』では、烏丸資任(からすま・すけとう)役を好演。
凛とした佇まいと知的な演技が視聴者の心に残りました。
さらに、NHK『真田太平記』やフジテレビ系『早春スケッチブック』など、
時代劇から現代ドラマまで幅広い作品に出演。
派手さこそないものの、作品の“芯”を支える職人俳優としての存在感は、常に際立っていました。
映像の中でも、舞台と同じく「人間の温もり」を感じさせるのが水谷貞雄さんの特徴。
どんな役でも誠実に向き合う姿勢は、多くの視聴者に“本物の演技”を届けてきました。
水谷貞雄さんの功績86歳での快挙

2020年、水谷貞雄さんは舞台『新・正午浅草』で永井荷風役を演じ、その年の読売演劇大賞・優秀男優賞を受賞しました。
なんと当時86歳。これは史上最年長での受賞という快挙でした。
その舞台では、長年にわたり培った人間観察と表現力が存分に発揮され、老境の文学者・荷風の孤独と洒脱を見事に表現。
観客からは「年齢を超えた瑞々しい演技」「人生そのものを見せてくれた」と絶賛の声が上がりました。
水谷さんは生涯を通じて、**“演技とは生き方そのもの”**という信念を貫いた人。
その姿勢は後進たちに大きな影響を与え、劇団民藝における精神的支柱でもありました。
まとめ
水谷貞雄さんの91年の生涯は、演劇の力を信じ続けた人生でした。
法学部出身という異色の経歴ながら、民藝という“人間を描く劇団”で磨かれた演技は、多くの人の心に深い感動を与えました。
最後まで“現役俳優”として舞台に立ち続け、86歳で歴史を塗り替えた姿は、まさに**「生涯現役の芸術家」**そのもの。
静かに幕を閉じたその人生は、今も多くの演劇人に希望と尊敬を与えています。
それでは、ありがとうございました!
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